不正咬合の種類
叢生(そうせい)
隣り合った歯が互いに重なり合っている状態で、「乱ぐい歯」とも呼ばれます。歯と歯の間の虫歯や、歯肉炎の原因となる危険性があるため注意が必要です。
治療例1
治療前
治療後
主訴:八重歯 初診時年齢:12歳8ヶ月 女性
診断名:骨格型III級 臼歯関係III級 叢生
上顎はエキスパンジョンスクリューを装着して歯槽基底部を含めて骨格的に拡大し、下顎はポータータイプの拡大装置を装着して側方歯の整直を行いました。その後、上下顎両側第一小臼歯と下顎両側埋伏第三大臼歯を抜歯してマルチブラケットの治療をしました。顎間ゴムを装着して下顎歯列の遠心移動を行いました。
治療期間:拡大治療6ヶ月 マルチブラケット治療27ヶ月
費用目安:891,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。
上顎前突(じょうがくぜんとつ:出っ歯)
上の前歯が、下の前歯よりも大きく前に突き出しています。場合によっては口を完全に閉じることができない状態になります。 外傷を受けやすいことや、口が完全に閉まらないために上の前歯が乾燥し歯肉炎になりやすいという問題があります。さらに食べ物を細かく噛むことや、発音に影響する場合もあります。
治療例1
治療前
治療後
主訴:出歯 初診時年齢:11歳9ヶ月 女性
診断名:骨格型II級 臼歯関係II級 上顎前突
上顎両側第一小臼歯を抜歯してマルチブラケット装置による治療をしました。片顎抜歯の症例です。
治療期間:マルチブラケット治療28ヶ月
費用目安:858,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。
治療例2
治療前
治療後
主訴:出歯 初診時年齢:10歳1ヶ月 女性
診断名:骨格型II級 臼歯関係II級 上顎前突
ヘッドギアを装着して上顎の前方成長の抑制と上顎第一大臼歯の遠心移動を行いました。臼歯関係の改善の後、上下顎にポータータイプの拡大装置を装着して歯列弓の側方拡大を行い、マルチブラケットの治療をしました。非抜歯の治療です。
治療期間:ヘッドギア14ヶ月 拡大治療5ヶ月 マルチブラケット治療25ヶ月
費用目安:880,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。
下顎前突(かがくせんとつ:受け口)
下の前歯が上の前歯よりも前方で噛み合ってしまう歯がある場合をいいます。一般には「受け口」とも呼ばれ、審美面だけでなく、食べ物を細かくする能力が低下したり、顎関節の不快感を訴えたりする原因となることもあります。
治療例1
治療前
治療後
主訴:受口 初診時年齢:9歳8ヶ月 男性
診断名:骨格型III級 臼歯関係III級 下顎前突
上下歯列をポータータイプの拡大装置を装着して側方拡大し、部分ワイヤー(ユーティリティアーチ)を装着して前歯の圧下をしました。上顎に装着したホールディングアーチを固定源にしてフェイシャルマスクを装着して上顎の前方成長の促進と下顎の前方成長の抑制を行いました。マルチブラケットを装着しない部分治療の症例です。
治療期間:拡大治療5ヶ月 ユーティリティアーチ治療9ヶ月 フェイシャルマスク13ヶ月
費用目安:429,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。
治療例2
治療前
治療後
主訴:受口 初診時年齢:33歳3ヶ月 女性
診断名:骨格型Ⅲ級 臼歯関係Ⅲ級 上顎左側側切歯欠損を伴う下顎前突
顎右側第一小臼歯と下顎両側第一小臼歯を抜歯してマルチブラケットの治療をしました。
治療期間:マルチブラケット治療30ヶ月
費用目安:869,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:前歯が欠損した症例や前歯を抜歯をした症例では、正中線が一致しにくくなる事があります。歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯周炎が生じる場合があります。
治療例3
治療前
治療後
主訴:受口 初診時年齢:22歳8ヶ月 男性
診断名:骨格型III級 臼歯関係III級 下顎前突
マルチブラケットによる術前矯正の後に外科的に下顎を後方移動しました。現在、当院では外科矯正の保険診療は行っておりません。
治療期間:マルチブラケット治療29ヶ月
費用目安:保険診療
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。外科矯正の場合は、知覚異常が生じる可能性もあります。
口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯周炎が生じる場合があります。
開咬(かいこう)
上下の奥歯をしっかり噛みこんでいる状態でも、前歯が噛み合わずすきまができてしまうものをいいます。
食べ物を前歯で噛み切ることができなくなり、また、飲み込む時に舌を前に出してしまう癖がつきやすく、放置しておくとさらに症状が悪化する場合もあります。
治療例1
治療前
治療後
主訴:乱杭歯 初診時年齢:24歳2ヶ月 女性
診断名:骨格型I級 臼歯関係II級 開咬を伴う叢生
上顎にパラタルアーチを装着後に、上顎両側第一小臼歯と下顎第三大臼歯(智歯)抜歯してマルチブラケットによる治療をしました。前歯被蓋の改善には顎間ゴムを使用しました。
治療期間:マルチブラケット治療32ヶ月
費用目安:880,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。舌癖が残存すると後戻りが起こることがあります。
側方偏位
下あごが横にずれて噛んでいるかみ合わせです。
上あごに比べて下あごの幅が大きい場合に生じやすいかみ合わせです。若年者では早期接触によって下あごが誘導されているだけ場合もありますが、成人まで放置すると骨挌がゆがんで、横にずれた状態であごが出来上がってしまうこともあります。
治療例1
治療前
治療後
主訴:正中がずれている 初診時年齢:18歳11ヶ月 女性
診断名:骨格型I級 臼歯関係I級 下顎左側変位
上下歯列にマルチブラケットを装着して治療をしました。下顎歯列の偏位は顎間ゴムを装着して改善しました。非抜歯治療です。
治療期間:拡大治療6ヶ月 マルチブラケット治療23ヶ月
費用目安:869,000円(検査診断料・処置料含、消費税込)
副作用・リスク:歯科矯正治療では、歯根吸収を起こす可能性があります。口腔清掃が不十分な場合は、う蝕や歯肉炎が生じる場合があります。顎間ゴムの装着により顎関節に不調が生じる可能性もあります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 矯正歯科装置装着後に違和感、不快感、痛みなどが生じることがあります。一般的には数日間~1、2週間で慣れてきます。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらにかかりつけ歯科医を定期的に受診することが大切です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉が痩せて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの顎関節症状が生じることがあります。
- 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形の修正やかみ合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
- 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 動的治療が終了し装置が外れた後に、現在のかみ合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやり直す必要性が生じる可能性があります。
- 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びやかみ合わせの「後戻り」が生じる可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずの影響で歯並びやかみ合わせに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びやかみ合わせが変化することがあります。
- 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。